2019年春は新時代「令和」を迎えたこともあり、ファッション企業や業界人にとっても心機一転してスタートする絶好のタイミングではないだろうか。ここでは、目まぐるしく変化するファッション業界の現在の潮流を語る上でハズせないキーワード4つを解説する。これらのキーワードは業界に限らず、普段の生活や消費活動に深く関わっており、この先もより浸透していくだろう。
直訳すると持続可能性という意味。環境、社会、経済の観点から持続可能にしていくことを指す。その大きな指標になっているのが15年9月の国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)だ。具体的には、1.貧困をなくそう、2.飢餓をゼロに、3.全ての人に健康と福祉を、4.質の高い教育をみんなに、5.ジェンダー平等を実現しよう、6.安全な水とトイレを世界中に、7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに、8.働きがいも経済成長も、9.産業と技術革新の基礎をつくろう、10.人や国の不平等をなくそう、11.住み続けられるまちづくりを、12.つくる責任つかう責任、13.気候変動に具体的な対策を、14.海の豊かさを守ろう、15.陸の豊かさを守ろう、16.平和と公正をすべての人に、17.パートナーシップで目標を達成しようの17項目。さまざまなレベルでの取り組みが行われているが、ファッション業界でも「H&M」や「バーバリー(BURBERRY)」のプラスチックバッグの使用廃止などの動きが盛んだ。
「自分さえよければ。自分の国さえ守れれば」という考えがにじむドナルド・トランプ(Donald Trump)が米大統領に就任して以降、世界中で「それでいいの?他の人は無視?」という疑問が噴出した。結果「世界にはいろんな人がいるよね」と、人種や性別、宗教、価値観の違いを尊重する考えが広がっている。これが「ダイバーシティー」(日本語では「多様性」)だ。最近はそこから「いろんなコトが違うけれど、仲間だよね」と他者を自分のコミュニティーに受け入れる概念が生まれている。これが「インクルージョン」(日本語では「包括・包摂性」)。人種のるつぼである米国では、多数のプラスサイズモデルがランウエイに登場するなど特に浸透してきているが、最近では「グッチ(GUCCI)」や「プラダ(PRADA)」の商品が黒人差別的だと非難されるなど、こうした価値観がブランドや企業にも強く求められるようになっている。
直訳すると顧客直結型、わかりやすく言えばネットを使ってブランドやメーカーが消費者に直接販売するビジネスモデルのこと。特徴はリアル店舗を通さず、ネットだけで完結するため、生産と販売にかかるコストを抑えられるところ。海外では原価率やプロモーションなどすべてのコストを公開し、透明性とサステイナビリティーを打ち出す米国サンフランシスコ発の「エバーレーン(EVERLANE)」が有名だ。日本ではこれまで百貨店を主な販路としてきた大手アパレル、オンワードホールディングスのD2Cスーツブランド「カシヤマ・ザ・スマートテーラー(KASHIYAMA THE SMART TAILOR)」が急成長している。また参入コストが低いことから、専門学校を卒業したばかりの若手デザイナーがインスタグラムでファンを増やし、ネット通販で受注販売するという新しいやり方も広がっている。働きながら夜間に服飾専門学校に通っていた高坂マールが在学中にスタートさせた「フーフー(FOUFOU)」は、インスタと受注生産という仕組みをうまく使うことで低価格を実現。着実にファンを増やしている。D2Cブランドはファッション業界に新しい風を吹かせつつある。
若い世代を中心に、フリマアプリの「メルカリ」「ラクマ」などを利用して“買って売る”消費行動が当たり前になっている。一般的に店でモノを買う一次流通に対し、それらをさらに他の人に売ったり買ったりすることを二次流通(リセール)という。18年8月に20〜30代の約1500人を対象にアンケートを実施したところ、7割以上が二次流通を利用したことがあると回答。ファッション業界への影響も大きく、新品が売れなくなるという懐疑的な声もあり、賛否両論。二次流通の利用者は徐々に増え続けているため、あるブランドの商品が定価に比べてどのぐらいの価格で取引されているのかを見て、アイテムやブランドの価値を判断する基準の一つとして参考にする人も現れている。中古衣料の売買では、ワールドが買収した「ラグタグ」やゲオホールディングスの「セカンドストリート」、ZOZOの「ゾゾ ユーズド」なども多く利用されている。